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オムロン パワーコンディショナ KPVシリーズの電流・電圧設計解説

2025 7/16
RE100
2025年7月16日

近年、太陽光パネルの高出力化に伴い、パワーコンディショナ(PCS)との接続設計において、電流や電圧のバランスに不安を感じる方が増えています。特に、オムロン製のKPVシリーズと最新の高出力パネルを組み合わせた場合、「この構成で本当に安全なのか?」「仕様を超えないか?」といった疑問が多く寄せられます。

この記事では、太陽光従事している方なら一度は頭を悩ませたかもしれない、この点についてKPVシリーズの仕様を確認しながら、実際の設計事例に基づいた解説していきます。

KPV-A55-J4のPCSで設計をする際、オムロン公式ホームページの仕様を見ると下記のように記載があります。

まず直流の電流値のみに注目します。

最大許容短絡電流4回路:DC50A(1回路:12.5A)
3回路:DC49.8A(1回路:16.6A)
2回路:DC40A(1回路:20A)
最大動作入力電流4回路:DC40A(1回路:10A)
3回路:DC36A(1回路:12A)
2回路:DC24A(1回路:12A) 

そして近年パネルは高出力化していることに伴って電流値も上昇しております。

さらに最近使用したJKM590N-72HL4-V-Jのパネルを例にし、パネル仕様と照らし合わせます。

KPVシリーズとパネルの仕様確認

項目KPV(例:KPV‑A55‑J4)パネル(例:JKM590N‑72HL4‑V)
短絡電流(Isc)4回路:DC50A(1回路:12.5A)
3回路:DC49.8A(1回路:16.6A)
2回路:DC40A(1回路:20A)
14.13 A
最大動作電流(Imp)4回路:DC40A(1回路10A)
3回路:DC36A(1回路12A)
2回路:DC24A(1回路12A)
13.50 A
定格電圧範囲DC50~450 VVoc:52.63 V、Vmp:43.71 V

表面上は、パネル1枚あたりのImpが13.5 Aと高いため、3直列なら40.5 AとなりPCSの許容を超えるように見えます。しかし実際の設計では、過積載や直並列の工夫によりこの課題をクリアできます。

ここでNGと判断せず、次に注目するのは1回路辺りの発電量です。

条件として全て160%以上の過積載率と想定して計算します。

このパワコンは1台の発電量が5.5kWです。

過積載率を160%以上にするために、

5.5kW×1.6(160%)=8.8kWのパネルを接続する必要があります。

つまり8.8kW÷0.59kW(590W)≒14.92枚

15枚として、5直3並列としましょう。また16枚の場合も想定して8直2並列も検討します。

3回路入力した場合は1回路の発電量が約1.84kWになります。

2回路入力した場合は1回路の発電量が2.75kWになります。

そして次に注目するのは1回路辺りの電圧です。

まずパワコンの直流運転可能電圧範囲は

運転可能電圧範囲DC50~450V

次にパネルの電圧値は

開放電圧(Voc)は52.63V

最大出力動作電圧(Vmp)は43.71V

まず5直3並列の場合を検証します。

5直列時の最大出力動作電圧は43.71V×5枚=218.55V

PCSの3回路入力時発電量、つまり3並列時の1回路辺りの発電量は5.5kW÷3回路≒1.84kWです。

このことから、この1回路辺りの最大電流値は下記になります。

1840W÷218.55V≒8.42A (←電力【W】=電圧【V】×電流【A】 から)

動作電流はパワコンの最大動作入力電流(3回路時36A、1回路12A)を満たします。

次に6直2並列の場合を検証します。

6直列時の最大出力動作電圧は43.71V×6枚=262.26V

2並列時の1回路辺りの発電量は5.5kW÷2回路=2.75kWです。

つまりこの1回路辺りの最大電流値は下記になります。

2750W÷262.26V≒10.49A

こちらも動作電流はパワコンの最大動作入力電流(2回路時24A、1回路12A)を満たします。

つまり1回路辺りの入力電圧を上げて過積載をすることでパネルの最大動作電流を抑えられるということになります。

実際には温度計数も考慮する必要がありますが、一旦は考え方の入門として温度計数は度外視で考えおります。

以上から設計のポイントをまとめます。

電圧・電流の設計ポイント

  • 電圧が高い=電流が抑えられるが、低温時に電圧上限を超えるリスクあり。
  • 電圧が低い=電流が増えるが、夏場の高温時に電流超過の恐れ。
  • よって、電流設計と電圧設計のバランスが最重要です。

過積載率と安全設計

  • 設計時は過積載率180%以上を目安にすることで、安定した発電量を得ながら動作電流を安全域に保てます。
  • 冬季の低温時や雲間の急な日射変動による一時的な電流上昇も、ある程度設計に織り込む必要があります。

温度係数と設計余裕

パネル電圧や電流は温度によって変化します。

  • 高温時 → 電圧低下、電流増加
  • 低温時 → 電圧上昇、電流減少

このようにパネルの特性を見て最適な設計をする必要があります。

安全率をどの程度見るかにもよりますが、その点は事業主と設計思考をすり合わせする必要があります。

そのためもし判断基準等、疑問点があればいつでもお問い合わせください!

※PCS仕様情報はオムロンソーシアルソリューションズ株式会社公式サイトhttps://socialsolution.omron.com/jp/ja/products_service/energy/product/kp/kpv_spec.htmlより引用しています。(2025年7月時点閲覧)

※パネル仕様情報はHUGE森株式会社「JKM570-590N-72HL4-V(J&F7仕様書)」
https://www.hugemori.co.jp/wp-content/uploads/2024/05/JKM570-590N-72HL4-V-J-F7-JP.pdf より引用しています。(2025年7月時点閲覧)

RE100
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  • 低圧発電所のリパワリング設計
  • 【施工図】展開図作成

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